2016年4月14日木曜日

<ゼン・ヒラノ演技ノート・第9話>

<ゼン・ヒラノ演技ノート・第9話>
*第9話*
演技ノート第8話その他のリラックスにつづく


『心理的リラックスについて』
~公開の孤独(公開の孤独)プライベート モーメント~
多くの才能ある俳優たちが、観客の圧力に負けて無残な結果に終わることが多い。
俳優が舞台でリラックスしなければ、リラックスしなければと焦れば焦るほど、今ここでやるべき仕事に対する俳優の集中力が観客に、又は結果を求めることに流されていく。
観客からの抑圧を遮断する為に、または、その抑圧からフリーになる為にスタニス・ラフスキーは、公開の孤独という手法を用いた。舞台で上からのスポットライトを想定し、その中に居座って自分以外に誰もいないと信じる方法である

ストラスバーグは晩年スタニス・ラフスキーの本を読み返して、
この公開の孤独の重要性を再認識し、
人が他人の目を気にしない場所は何処だろうと考えた。
多くの人は自分の部屋だと答えるだろう。
それでは、想像で舞台の床に自分の部屋をこしらえてみようと。
(五感の記憶で、つまり、頭の中に記憶されたものを目の前に置いてみる。)
 形、色、部屋の大きさ、床、窓、テーブルやその他の家具等々、
ユックリと時間をかけて置いていく。
暫くすると自分以外に誰もいないと言う感覚がやってく る。
(この訓練は稽古場等、人前でやる必要がある。)
どのくらい深くこの訓練、プライベート モーメントが出来ているかを調べる為に、人に見られたくないことをやって見る。
例えば、裸になってみる、書いたラブレターを声を出して読んでみる等々。少しでも周りの人の視線が気になったら、直ちにやめて部屋の注意の集中に戻る。このプロセスを繰り返し繰り返しやって公開の孤独の深みに入っていく。
(僕は、エクササイズ マニアックで、街を歩きながら、地下鉄の中で、大陸横断の時、オートバイを乗りながら自分の部屋を持ち歩いた。)
アクターズ・スタジオでは、戯曲の一場面を演じるのみでエクササイズ持ち込み禁止だったが、ストラスバーグは特別僕にこのプライベートモーメントのエクササイズを許可してくれた。
当日、スタジオでニューヨークの自分の部屋に集中すると黄色みがかった床、白い天井、エヤコンの付いた窓からむかえの安ホテルが見えてくる。正面に自作の 大きな本棚、右手にピアノ、出入り口のドアーの覗き穴を覗くと隣の住人のドアーがひっそりと佇んで見える。部屋の片隅の空気が濃厚になって静かに佇み、と ても落ち着いた雰囲気がやってくる。
「私の部屋よ、こんにちわ」4.50人いるメンバーの前で全ての抵抗は全て消え去った。
一人一人のメンバーの顔がはっきりと見えるのになんの抵抗もなく、素っ裸になって立ったり座ったり歩き回ったりした。一瞬脳裏を掠めたのは、日本の春画があの部分を誇張して描いているので、失望させたかなと。
アクターズ・スタジオの歴史上素っ裸になったのは、僕だけだと云われた。クラスを終わって部屋が消え、後になって恥ずかしいなと思った。しかし、俳優の重要な技術、公開の孤独を修得出来た大きた大きな喜びがあった。
ストラスバーグの卓越したこのエクササイズを実践出来たことに深く感謝。

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