ゼン・ヒラノ演技ノート(番外編)「僕は松葉杖をついた天使に出会った。」
僕は、松葉杖をついた天使に出会った。
彼女は八四才、西に病の人の求めあれば、大きなリックを背負いカバンを斜交いにかけ、両手の松葉杖で不自由な脚を庇いながら夜行バスに乗る。絶えず穏やかな笑顔をたたえて。東に求めの声あれば又、松葉杖を携えて東の夜行バスに乗る。
彼女はマッサージ師である。常に笑みを浮かべて疲れた様子を見せた事がない。
淡々と注意深く人の心と体の疲れを揉みほぐしていく。
彼女の悠久の大河の流れを想わせる態度に時間は存在しないように思えた。
今回、僕は部屋に横たわり、庭を見ながら彼女の治療を受けていた。
庭の木が風で美しく揺れ動いている。僕は心と体が緩んでいき、静かな時間が流れているのを感じていた。・・・・・・
暫くして、理由もなく目頭が熱くなり僕の目から涙が流れてきた。
何でこんなに感傷的になったのか訝しげに思った。
それから、しばらくして、このおぼろげな想いが何なのかはっきりして来た。
僕の背の後ろで人間の形をした天使が黙々と仕事をしている。
それは天使だ、彼女は天使だ!紛れも無く天使だ!と確信した。
喜びとも愛おしさとも言えない涙が、止めどなく静かに溢れて来た。
(こんなに泣いたのは、30年前に恩師が他界した時以来だ。)
僕の部屋に天使がいる!
ふと思った。我々は、いつも、 おおぜいの天使に出会っているのに気づかないのかもしれない。
そうこう想いにふけっているうちに、別の感情がやってきた。
すまない、もったいないないという思いだ。その思いに満たされて又、涙が溢れて来た。
僕のような凡庸な人間に天使は、かかづりあうべきではないと。
世のため、人の為に命まで投げ出した偉大な人 達がこの世には、大勢いる。
ガンジー、キング牧師、マリア テレサ、リンカーン 、そして、 ご高齢なのに身体の不自由を押して被災地に駆けつける天皇陛下と美智子妃殿下。又、野球の練習は絶対に見せなかったのに、脳梗塞を患って、同じ病の人々を勇気づける為にリハビリを公開している長嶋選手等々、数え上げたらきりがない。
天使達よ!僕のまわりでウロウロするな。
これらの偉大な人々のところに翔んで行って、彼らの心と体の疲れを癒して欲しいと。
またして、ふと気がついた。これら偉大な人達はみんな天使かも知れないと・・・・
庭に夕陽が傾いていた。
松葉杖をついた僕の天使よ!
有難う。とても、愛しています。ZEN
☆河口湖スタジオにおいて
ゼン・ヒラノによるプライベートレッスンを行います。
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http://zenhirano-acting.blogspot.jp/2016_05_01_archive.html
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