<ゼンヒラノ演技ノート第11話>
*第11話ーその1ー*
『五感の記憶の訓練の必要性』
最近スタニスラフスキー関係の何冊かの本を読み返してスタニスラフスキーの偉大さに改めて畏敬の念を深めると共に、恩師ストラスバーグが、スタニスラフス
キーシステムの深い理解のもと、現代社会(オーディション
システム)の俳優たちに適合した訓練方法を確立したことは、彼の俳優の成長を真に願う深い愛情のたまものだと確信しています。
話は逸れるが
、ニューヨークでのある大雪の日、ストラスバーグは数人の出席者しかいないスタジオに、いつもの通り、時間きっかりにずかずかと入ってきてコートを脱いで
椅子に腰掛けると後ろも振り向かずに、ステージに待機していた二人の俳優に演技のスタートの合図を出した。
彼は、個々の俳優の問題を解決すべく、すべての情熱を注いだ後、椅子から立ち上がりコートを着て、今度も後ろも振り向かずにスタジオを後にした。
僕は感動した!
ありがたいと思った。
『 Acting is believing 』
という言葉がある。
実際の恋人同士を舞台に連れて来てもアートに成らない。
ドキュメンタリーだ。
大嫌いな相手でも、想像によって胸がドキドキしたら不思議にアートになる。
俳優にとって、そこに実在しないものを
想像力によって実在させれば、アートになり、
観客に感銘を与えることが出来る。
2016年4月27日水曜日
2016年4月19日火曜日
<ゼンヒラノ演技ノート・第10話ーその2>
<ゼンヒラノ演技ノート・第10話ーその2>
『注意の集中について』
集中力を高めるには、リラックスが必要だ。
リラックスが良くなれば、集中力が高まり、
集中力が高まればリラックスが良くなっていく。
集中力の訓練にはそこに無いものに集中するのが、困難だがとても効果的だ。
頭にある五感の記憶(見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう)を目の前に置き、見れるものに、触れるものにしようという訓練だ。
例えば、静かに目を開き真夏の海辺に立つと、足が熱い砂に埋れている。
灼熱の太陽が肌を焦がす。
青い海が眼前に広がり、頭の上にはポッカリと空に浮かんだ 白い雲、
波の砕ける音がきこえてくる。潮の香り、そして冷たいコークが喉をうるおす。
あなたは舞台に立つている。
「真っ赤に燃えた太陽だから真夏の海は恋 の季節だよ」
と胸いっぱいに恋心をふくらませ大声であなたは歌い出す。
「砂の無いところで、砂だらけで立ち上がって叫び駆け回る時、それが俳優の誕生だ!」
とストラスバーグは言っていた。
五感の記憶があなたを想像の世界に息づかせ、体験の芸術を体験に導く。
ZEN
『注意の集中について』
集中力を高めるには、リラックスが必要だ。
リラックスが良くなれば、集中力が高まり、
集中力が高まればリラックスが良くなっていく。
集中力の訓練にはそこに無いものに集中するのが、困難だがとても効果的だ。
頭にある五感の記憶(見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう)を目の前に置き、見れるものに、触れるものにしようという訓練だ。
例えば、静かに目を開き真夏の海辺に立つと、足が熱い砂に埋れている。
灼熱の太陽が肌を焦がす。
青い海が眼前に広がり、頭の上にはポッカリと空に浮かんだ 白い雲、
波の砕ける音がきこえてくる。潮の香り、そして冷たいコークが喉をうるおす。
あなたは舞台に立つている。
「真っ赤に燃えた太陽だから真夏の海は恋 の季節だよ」
と胸いっぱいに恋心をふくらませ大声であなたは歌い出す。
「砂の無いところで、砂だらけで立ち上がって叫び駆け回る時、それが俳優の誕生だ!」
とストラスバーグは言っていた。
五感の記憶があなたを想像の世界に息づかせ、体験の芸術を体験に導く。
ZEN
2016年4月15日金曜日
<ゼンヒラノ演技ノート*第10話ーその1>
<ゼンヒラノ演技ノート*第10話ーその1>
『注意の集中について』
どんな職業でも名人と云われる人たちの集中力はすごい。
昔、東京目白に「翁」というそば屋があった。
その主人のやや前かがみになって、そばの茹で加減を見る眼つきは静かだが、異常なものを感じさせた。
出てきたそばの盛り付けの美しさに、深く感動させられた。
その後日本一の蕎麦作りの名人と云われるようになった。
スポーツの分野でも集中力なくして世界記録は無理、ここ一番の集中力と云われた。
千代の富士、
バターボックスに立つイチロー、
ラクビーの人気選手五郎丸選手等々。
ましてや、俳優はそこに存在しないものを、
いつ、どこで、誰が、何を、如何にしたかを
集中力で現実のものとしなければならない。
(年の暮れ雪の降る寒空のもと、山里離れた墓石の前で、足元もおぼつかない痩せ細った老人が、昔の愛する人の面影を偲びながら赤い花を添え、手を合わせていた。)
俳優は想像力を使ってこれらのことを自分にとって、
今ここに現実のものとするには、集中力が鍵である。
話はそれるが、僕の演出を全面的に協力出演してくれたペニー ・アレンという女優がいた。
「彼女は、ニューヨークで一番才能がある女優だ。」
とストラスバーグは言っていた。
ある日、彼がメンバー達に
「ペニーが6・7年前床を拭いていたのを覚えている人は?」
と聞いた。
殆ど全員が手を挙げた。
僕はペニーに
「床を拭いている時、何をやってたんだ?」
と聞いてみた。
「ただ、床を拭いてただけよ」
とペニー。
彼女の稀なる集中力の凄さを実感させられた。
彼女の深い集中力は天からの贈り物、人間の魂の扉を開く鍵なのかもしれない。
時々、マーロン・ブランドの演技に、この深さを見ることがある。
『注意の集中について』
どんな職業でも名人と云われる人たちの集中力はすごい。
昔、東京目白に「翁」というそば屋があった。
その主人のやや前かがみになって、そばの茹で加減を見る眼つきは静かだが、異常なものを感じさせた。
出てきたそばの盛り付けの美しさに、深く感動させられた。
その後日本一の蕎麦作りの名人と云われるようになった。
スポーツの分野でも集中力なくして世界記録は無理、ここ一番の集中力と云われた。
千代の富士、
バターボックスに立つイチロー、
ラクビーの人気選手五郎丸選手等々。
ましてや、俳優はそこに存在しないものを、
いつ、どこで、誰が、何を、如何にしたかを
集中力で現実のものとしなければならない。
(年の暮れ雪の降る寒空のもと、山里離れた墓石の前で、足元もおぼつかない痩せ細った老人が、昔の愛する人の面影を偲びながら赤い花を添え、手を合わせていた。)
俳優は想像力を使ってこれらのことを自分にとって、
今ここに現実のものとするには、集中力が鍵である。
話はそれるが、僕の演出を全面的に協力出演してくれたペニー ・アレンという女優がいた。
「彼女は、ニューヨークで一番才能がある女優だ。」
とストラスバーグは言っていた。
ある日、彼がメンバー達に
「ペニーが6・7年前床を拭いていたのを覚えている人は?」
と聞いた。
殆ど全員が手を挙げた。
僕はペニーに
「床を拭いている時、何をやってたんだ?」
と聞いてみた。
「ただ、床を拭いてただけよ」
とペニー。
彼女の稀なる集中力の凄さを実感させられた。
彼女の深い集中力は天からの贈り物、人間の魂の扉を開く鍵なのかもしれない。
時々、マーロン・ブランドの演技に、この深さを見ることがある。
2016年4月14日木曜日
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第7話>
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第7話>
『メンタルなリラックスについて』
精神的にアップ、ダウンしやすい人、ものごとに集中力を持続させるのが難しい人、頭がうるさくて何時もイライラしている人等は、首から上のリラックスから始めて前記の身体のリラックスに移ると効果がある。
『メンタルなリラックスについて』
精神的にアップ、ダウンしやすい人、ものごとに集中力を持続させるのが難しい人、頭がうるさくて何時もイライラしている人等は、首から上のリラックスから始めて前記の身体のリラックスに移ると効果がある。
リラックスの訓練は椅子に座って行うとやりやすい。
1)こめかみ
長時間本を読んだり、考えごとに囚われたりするとこめかみを無意識に揉み始めたりする。こめかみにはたくさんの神経系統が集まっていて緊張しやすい。
まず、こめかみにそっと指先を当てて位置を確かめる。こめかみにゆるめ、ゆるめとやさしく命令する。(舞台で指で揉むわけにいかない) 想像で暖かい日光や、おしぼりが当たっているとか、数分間右のこめかみに集中する。ゆるめ、ゆるめと。ここでも、また、結果を求めない、プッシュしない。 (ボティビルダーが身体の一部を鍛えるとき、その部分に意識を集中させることが必要不可欠だと云われる) リラックスも集中なくして成立しない。次に左のこめかみに移り、そして両方のこめかみを同時に。
2)眼
我々は日常の生活を90パーセント眼に頼っていると云われる。四六時中眼に頼って生活しているので疲れやすい。疲れの為無意識に目頭を押さえることがある。
まず、右目から始めよう。右目に注意を集中してかるーく瞼を閉じてみよう。暖かな丸い水槽で、金魚がポッカと浮いているように目玉が浮いている等、自分の自由な発想で慌てず、急がずユックリと時間を掛けて集中してみよう。左目、両目と移っていく。
3)顎
あごの筋肉を緩めてみよう。口は身体の中で一番訓練された部分だと云われる。
考えると同時に言葉を発している。言葉にして初めて自分が何を考えていたかを知ることができる程の驚くべきメカニックが働いている。又、それと反対にこんなことを言ってはまずいなと思った瞬間ブレーキがかかリ口を閉ざす。頻度が多く緊張しやすい場所だ。
顎に集中してユックリとゆるまるように、上下、左右、前後に動かしてみよう。
ついでに舌も突き出したりして時間を掛けて緩めてみよう。よだれが出るような、二重顎に感じるまでにリラックスさせてみよう。
4)首の後ろ
首は重い頭を支えているので緊張しやすい。前後、左右、上下、斜めと必要に応じて又は、刺激に従って常に無意識的に動かしている。首は、その中に動脈(血管)、気道、食道、神経、頸椎(骨)が通っている。人間の生命に関わる重要な部分で緊張しやすい。
先ず、背もたれのある椅子にだらしなく座って、全ての体重を預けって首を後ろに落としてみよう。左右にユックリとゆるまるように動かしながら深く深く落と していく。呼吸を止めないこと。(僕の経験で、一女生徒の首のリラックスを調べるために彼女の頭を右手で支えた時にあまりのリラックスのすごさに、手を離 したら彼女の頭が床に落ちるのではないかと恐怖を覚えたことがあります。数千人以上の俳優リラックスをしらべてきての初めての経験です。)
この椅子に座った姿勢で初めに戻ってこめかみ、眼、顎、首と必要なところをより深くリラックスするように努力する。
但し一生懸命にやると余分な力が入って逆効果になるので楽に、楽に軽い関心を持って少しづつリラックスの深みに入っていく。
必要な時間を掛けてリラックスできたら次に移る。
椅子に座ったそのままの姿勢で深い眠りに入っていくよう心掛ける。
夜行バスに乗って眠りにつくように。
但し、眠ってしまわないで、眠りの世界に入るギリギリの境界線まで近づいてみよう。人生で経験したことの無い深いリラックスを体験することだろう。
1)こめかみ
長時間本を読んだり、考えごとに囚われたりするとこめかみを無意識に揉み始めたりする。こめかみにはたくさんの神経系統が集まっていて緊張しやすい。
まず、こめかみにそっと指先を当てて位置を確かめる。こめかみにゆるめ、ゆるめとやさしく命令する。(舞台で指で揉むわけにいかない) 想像で暖かい日光や、おしぼりが当たっているとか、数分間右のこめかみに集中する。ゆるめ、ゆるめと。ここでも、また、結果を求めない、プッシュしない。 (ボティビルダーが身体の一部を鍛えるとき、その部分に意識を集中させることが必要不可欠だと云われる) リラックスも集中なくして成立しない。次に左のこめかみに移り、そして両方のこめかみを同時に。
2)眼
我々は日常の生活を90パーセント眼に頼っていると云われる。四六時中眼に頼って生活しているので疲れやすい。疲れの為無意識に目頭を押さえることがある。
まず、右目から始めよう。右目に注意を集中してかるーく瞼を閉じてみよう。暖かな丸い水槽で、金魚がポッカと浮いているように目玉が浮いている等、自分の自由な発想で慌てず、急がずユックリと時間を掛けて集中してみよう。左目、両目と移っていく。
3)顎
あごの筋肉を緩めてみよう。口は身体の中で一番訓練された部分だと云われる。
考えると同時に言葉を発している。言葉にして初めて自分が何を考えていたかを知ることができる程の驚くべきメカニックが働いている。又、それと反対にこんなことを言ってはまずいなと思った瞬間ブレーキがかかリ口を閉ざす。頻度が多く緊張しやすい場所だ。
顎に集中してユックリとゆるまるように、上下、左右、前後に動かしてみよう。
ついでに舌も突き出したりして時間を掛けて緩めてみよう。よだれが出るような、二重顎に感じるまでにリラックスさせてみよう。
4)首の後ろ
首は重い頭を支えているので緊張しやすい。前後、左右、上下、斜めと必要に応じて又は、刺激に従って常に無意識的に動かしている。首は、その中に動脈(血管)、気道、食道、神経、頸椎(骨)が通っている。人間の生命に関わる重要な部分で緊張しやすい。
先ず、背もたれのある椅子にだらしなく座って、全ての体重を預けって首を後ろに落としてみよう。左右にユックリとゆるまるように動かしながら深く深く落と していく。呼吸を止めないこと。(僕の経験で、一女生徒の首のリラックスを調べるために彼女の頭を右手で支えた時にあまりのリラックスのすごさに、手を離 したら彼女の頭が床に落ちるのではないかと恐怖を覚えたことがあります。数千人以上の俳優リラックスをしらべてきての初めての経験です。)
この椅子に座った姿勢で初めに戻ってこめかみ、眼、顎、首と必要なところをより深くリラックスするように努力する。
但し一生懸命にやると余分な力が入って逆効果になるので楽に、楽に軽い関心を持って少しづつリラックスの深みに入っていく。
必要な時間を掛けてリラックスできたら次に移る。
椅子に座ったそのままの姿勢で深い眠りに入っていくよう心掛ける。
夜行バスに乗って眠りにつくように。
但し、眠ってしまわないで、眠りの世界に入るギリギリの境界線まで近づいてみよう。人生で経験したことの無い深いリラックスを体験することだろう。
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第6話>
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第6話>
「リラックスについての具体的訓練」
まず、初めに自分の身体の何処が緊張しているかを見つける。
見つけたらその部分を緩まるようにユックリと動かして、緩んだかどうかチェックする。
「リラックスについての具体的訓練」
まず、初めに自分の身体の何処が緊張しているかを見つける。
見つけたらその部分を緩まるようにユックリと動かして、緩んだかどうかチェックする。
この訓練に必要不可欠なことは集中力だ。時間をたっぷりと使って、集中して、深く…深く…。
集中力は、金槌でクギを打つようでなく、ねじ釘をユックリと回しながら深く入っていくようにする。
優れた俳優は、時間をたっぷりと取ることができると云われる。
訓練は結果を追い求めず
「何が起こるか見てみよう」
と心に言い聞かせる。
脳は、体に動かせと命令すると比較的簡単に簡単に体は実行する。
リラックスの訓練とは、脳が緊張している部分に、リラックスしろと命令し、体が即実行に移すようにすることである。釣り人形のように、どの糸を緩めると、どの部分が緩まるのか探す仕事に似ている。
『難しいことを楽に出来るようにしよう。
楽に出来ることを習慣にしよう。
習慣を美しいものにしよう。』
~スタニスラフスキー~
まず、舞台で、カメラの前で明るく、軽やかで、柔軟で、美しく、リラックスした姿で立てるようにしよう。
集中力は、金槌でクギを打つようでなく、ねじ釘をユックリと回しながら深く入っていくようにする。
優れた俳優は、時間をたっぷりと取ることができると云われる。
訓練は結果を追い求めず
「何が起こるか見てみよう」
と心に言い聞かせる。
脳は、体に動かせと命令すると比較的簡単に簡単に体は実行する。
リラックスの訓練とは、脳が緊張している部分に、リラックスしろと命令し、体が即実行に移すようにすることである。釣り人形のように、どの糸を緩めると、どの部分が緩まるのか探す仕事に似ている。
『難しいことを楽に出来るようにしよう。
楽に出来ることを習慣にしよう。
習慣を美しいものにしよう。』
~スタニスラフスキー~
まず、舞台で、カメラの前で明るく、軽やかで、柔軟で、美しく、リラックスした姿で立てるようにしよう。
《ゼンヒラノ演技ノート・第5話》
《ゼンヒラノ演技ノート・第5話》
「リラックスについて」
リラックスについて考える時、恩師 リー・ストラスバーグのことを思い出す。
「リラックスについて」
リラックスについて考える時、恩師 リー・ストラスバーグのことを思い出す。
彼はリラックスが俳優訓練の最重要課題として何十年にわたって研究してきたのに、
誰かが「リラックスとは何ですか?」と質問すると、
彼の記憶からではなく、その場で改めて考えて答えを出している。
彼は、「リラックスは何か?を知るためには、緊張とは何か?を考えるといい」と言っていた。
たとえば、100メートルを10秒を切って走り抜ける選手、殴り合っているボクシングの選手に対して、解説者は「今日はリラックスがいいですね」と言う。
何故か?
リラックスとは、不必要な力を入れていないということである。
人間が立っているためには、立っているための必要なエネルギーがいる。
肩をいからしたり、膝を固めたりする必要がない。
不必要なものは、不必要であると。
なぜリラックスをすることが必要かというと、集中力が高まっているからであり、集中力が良くなると、よりリラックスが深くなるという相互関係にある。
リラックスに生まれつき恵まれた俳優がいる。
なかなかいい演技をするなあ、と思われる俳優も、ただリラックスが良いというだけのことが多い。
トップクラスの俳優は例外なくリラックスがいい。
だから、自分の集中していることに我を忘れ、観客の圧力からフリーになる。
そこで我々は、彼らのリラックスの能力に追いつく為に、意識的に自分を訓練が必要がある。
人間は他人の視線を感じると緊張する。
ましてや舞台では、観客はあなたを観にくる。
よって決められた時間と場所でリラックスする必要がある。
多くの人は酒を飲むとリラックスして外からの圧力や、自分自身に対する警戒心が緩み良い演技をする。ただし、問題は一杯で効いた酒の効果が、二週めには二 杯を必要とする。又、ドラッグをやると自分の頭の中で素晴らしい想像の世界が広がっていくかも知れないが、外に表れない。無表情となる。
よって、基本的にリラックスの訓練は、自分の身体にリラックスしろ!と命令したら、リラックスできる能力を獲得することだ。
人は脳の命令によって身体を動かすことは比較的楽に出来るが、命令によってリラックスすること(特に人前で)は難しい。
ある人は、習慣的な緊張を持っている。
自分自身を強く見せるか、守ろうとするために、無意識に肩や肘に力を入れている。
又、不安のために、いつも床を踏みつけて立っているかも知れない。
又、ある人は、小さい時の抑圧された生活環境のため天井に向けて上げた手を力を抜けと命令しても下りてこないので、自分で力を入れて下ろすことになる。
このような人は3,40人に一人の割合で見られる。
時間はかかるかも知れないが、このような人も訓練によって力を抜くことができるようになる。
立てばシャクヤク、座れば牡丹、歩く姿はユリの花
誰かが「リラックスとは何ですか?」と質問すると、
彼の記憶からではなく、その場で改めて考えて答えを出している。
彼は、「リラックスは何か?を知るためには、緊張とは何か?を考えるといい」と言っていた。
たとえば、100メートルを10秒を切って走り抜ける選手、殴り合っているボクシングの選手に対して、解説者は「今日はリラックスがいいですね」と言う。
何故か?
リラックスとは、不必要な力を入れていないということである。
人間が立っているためには、立っているための必要なエネルギーがいる。
肩をいからしたり、膝を固めたりする必要がない。
不必要なものは、不必要であると。
なぜリラックスをすることが必要かというと、集中力が高まっているからであり、集中力が良くなると、よりリラックスが深くなるという相互関係にある。
リラックスに生まれつき恵まれた俳優がいる。
なかなかいい演技をするなあ、と思われる俳優も、ただリラックスが良いというだけのことが多い。
トップクラスの俳優は例外なくリラックスがいい。
だから、自分の集中していることに我を忘れ、観客の圧力からフリーになる。
そこで我々は、彼らのリラックスの能力に追いつく為に、意識的に自分を訓練が必要がある。
人間は他人の視線を感じると緊張する。
ましてや舞台では、観客はあなたを観にくる。
よって決められた時間と場所でリラックスする必要がある。
多くの人は酒を飲むとリラックスして外からの圧力や、自分自身に対する警戒心が緩み良い演技をする。ただし、問題は一杯で効いた酒の効果が、二週めには二 杯を必要とする。又、ドラッグをやると自分の頭の中で素晴らしい想像の世界が広がっていくかも知れないが、外に表れない。無表情となる。
よって、基本的にリラックスの訓練は、自分の身体にリラックスしろ!と命令したら、リラックスできる能力を獲得することだ。
人は脳の命令によって身体を動かすことは比較的楽に出来るが、命令によってリラックスすること(特に人前で)は難しい。
ある人は、習慣的な緊張を持っている。
自分自身を強く見せるか、守ろうとするために、無意識に肩や肘に力を入れている。
又、不安のために、いつも床を踏みつけて立っているかも知れない。
又、ある人は、小さい時の抑圧された生活環境のため天井に向けて上げた手を力を抜けと命令しても下りてこないので、自分で力を入れて下ろすことになる。
このような人は3,40人に一人の割合で見られる。
時間はかかるかも知れないが、このような人も訓練によって力を抜くことができるようになる。
立てばシャクヤク、座れば牡丹、歩く姿はユリの花
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第9話>
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第9話>
*第9話*
演技ノート第8話その他のリラックスにつづく
『心理的リラックスについて』
*第9話*
演技ノート第8話その他のリラックスにつづく
『心理的リラックスについて』
~公開の孤独(公開の孤独)プライベート モーメント~
多くの才能ある俳優たちが、観客の圧力に負けて無残な結果に終わることが多い。
俳優が舞台でリラックスしなければ、リラックスしなければと焦れば焦るほど、今ここでやるべき仕事に対する俳優の集中力が観客に、又は結果を求めることに流されていく。
観客からの抑圧を遮断する為に、または、その抑圧からフリーになる為にスタニス・ラフスキーは、公開の孤独という手法を用いた。舞台で上からのスポットライトを想定し、その中に居座って自分以外に誰もいないと信じる方法である
。
ストラスバーグは晩年スタニス・ラフスキーの本を読み返して、
この公開の孤独の重要性を再認識し、
人が他人の目を気にしない場所は何処だろうと考えた。
多くの人は自分の部屋だと答えるだろう。
それでは、想像で舞台の床に自分の部屋をこしらえてみようと。
(五感の記憶で、つまり、頭の中に記憶されたものを目の前に置いてみる。)
形、色、部屋の大きさ、床、窓、テーブルやその他の家具等々、
ユックリと時間をかけて置いていく。
暫くすると自分以外に誰もいないと言う感覚がやってく る。
(この訓練は稽古場等、人前でやる必要がある。)
どのくらい深くこの訓練、プライベート モーメントが出来ているかを調べる為に、人に見られたくないことをやって見る。
例えば、裸になってみる、書いたラブレターを声を出して読んでみる等々。少しでも周りの人の視線が気になったら、直ちにやめて部屋の注意の集中に戻る。このプロセスを繰り返し繰り返しやって公開の孤独の深みに入っていく。
(僕は、エクササイズ マニアックで、街を歩きながら、地下鉄の中で、大陸横断の時、オートバイを乗りながら自分の部屋を持ち歩いた。)
アクターズ・スタジオでは、戯曲の一場面を演じるのみでエクササイズ持ち込み禁止だったが、ストラスバーグは特別僕にこのプライベートモーメントのエクササイズを許可してくれた。
当日、スタジオでニューヨークの自分の部屋に集中すると黄色みがかった床、白い天井、エヤコンの付いた窓からむかえの安ホテルが見えてくる。正面に自作の 大きな本棚、右手にピアノ、出入り口のドアーの覗き穴を覗くと隣の住人のドアーがひっそりと佇んで見える。部屋の片隅の空気が濃厚になって静かに佇み、と ても落ち着いた雰囲気がやってくる。
「私の部屋よ、こんにちわ」4.50人いるメンバーの前で全ての抵抗は全て消え去った。
一人一人のメンバーの顔がはっきりと見えるのになんの抵抗もなく、素っ裸になって立ったり座ったり歩き回ったりした。一瞬脳裏を掠めたのは、日本の春画があの部分を誇張して描いているので、失望させたかなと。
アクターズ・スタジオの歴史上素っ裸になったのは、僕だけだと云われた。クラスを終わって部屋が消え、後になって恥ずかしいなと思った。しかし、俳優の重要な技術、公開の孤独を修得出来た大きた大きな喜びがあった。
ストラスバーグの卓越したこのエクササイズを実践出来たことに深く感謝。
多くの才能ある俳優たちが、観客の圧力に負けて無残な結果に終わることが多い。
俳優が舞台でリラックスしなければ、リラックスしなければと焦れば焦るほど、今ここでやるべき仕事に対する俳優の集中力が観客に、又は結果を求めることに流されていく。
観客からの抑圧を遮断する為に、または、その抑圧からフリーになる為にスタニス・ラフスキーは、公開の孤独という手法を用いた。舞台で上からのスポットライトを想定し、その中に居座って自分以外に誰もいないと信じる方法である
。
ストラスバーグは晩年スタニス・ラフスキーの本を読み返して、
この公開の孤独の重要性を再認識し、
人が他人の目を気にしない場所は何処だろうと考えた。
多くの人は自分の部屋だと答えるだろう。
それでは、想像で舞台の床に自分の部屋をこしらえてみようと。
(五感の記憶で、つまり、頭の中に記憶されたものを目の前に置いてみる。)
形、色、部屋の大きさ、床、窓、テーブルやその他の家具等々、
ユックリと時間をかけて置いていく。
暫くすると自分以外に誰もいないと言う感覚がやってく る。
(この訓練は稽古場等、人前でやる必要がある。)
どのくらい深くこの訓練、プライベート モーメントが出来ているかを調べる為に、人に見られたくないことをやって見る。
例えば、裸になってみる、書いたラブレターを声を出して読んでみる等々。少しでも周りの人の視線が気になったら、直ちにやめて部屋の注意の集中に戻る。このプロセスを繰り返し繰り返しやって公開の孤独の深みに入っていく。
(僕は、エクササイズ マニアックで、街を歩きながら、地下鉄の中で、大陸横断の時、オートバイを乗りながら自分の部屋を持ち歩いた。)
アクターズ・スタジオでは、戯曲の一場面を演じるのみでエクササイズ持ち込み禁止だったが、ストラスバーグは特別僕にこのプライベートモーメントのエクササイズを許可してくれた。
当日、スタジオでニューヨークの自分の部屋に集中すると黄色みがかった床、白い天井、エヤコンの付いた窓からむかえの安ホテルが見えてくる。正面に自作の 大きな本棚、右手にピアノ、出入り口のドアーの覗き穴を覗くと隣の住人のドアーがひっそりと佇んで見える。部屋の片隅の空気が濃厚になって静かに佇み、と ても落ち着いた雰囲気がやってくる。
「私の部屋よ、こんにちわ」4.50人いるメンバーの前で全ての抵抗は全て消え去った。
一人一人のメンバーの顔がはっきりと見えるのになんの抵抗もなく、素っ裸になって立ったり座ったり歩き回ったりした。一瞬脳裏を掠めたのは、日本の春画があの部分を誇張して描いているので、失望させたかなと。
アクターズ・スタジオの歴史上素っ裸になったのは、僕だけだと云われた。クラスを終わって部屋が消え、後になって恥ずかしいなと思った。しかし、俳優の重要な技術、公開の孤独を修得出来た大きた大きな喜びがあった。
ストラスバーグの卓越したこのエクササイズを実践出来たことに深く感謝。
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第8話>
<ゼン・ヒラノ演技ノート・第8話>
『太極拳』
太極拳は一般の人のための中国でのとても優れた健康法である。
中腰で身体をユックリと大きく動かすことで、運動量が増え血行や新陳代謝が活発になり、深く呼吸することによって有酸素運動となり世界的に広まっている。
ー俳優のための太極拳ー
ストラスバーグは、ニューヨークにやって来た京劇の俳優たちをみて、彼達の身体能力に驚嘆した。
(僕自身中国に行って俳優たちの訓練や舞台を観て彼等の体の柔軟性に驚かされた。音もなく床に横たわったと思うと次の瞬間嘘のように軽やかに、なんの努力もなく、重力抵抗もなく立ち上がっている。)
ストラスバーグの質問に答えて俳優達は、このリラックスは太極拳からだという。
僕は、この話を聞いて、翌日ニューヨークの太極拳の教師ソヒヤ・デルザの門を叩いた。以来10年間訓練に励んだ。又、日本では、楊名時先生に教えて戴いた。
楊先生は大変素晴らしい人格者でこの場で心より感謝の意を評したいと思います。
「先生、ゼン・ヒラノです。本当にお世話になりました。ありがとうございます」
人は多くの人にお世話になって今がある。
当時、思い出に残っている話が一つある。全日本空手チャンピオンが先生のクラスを一緒に受けていたので、彼に質問した。
「試合をしているときに、なんに一番注意を集中しているか」
彼の答えは、
「99パーセント リラックスだ」
僕がニューヨークで修得した太極拳はUスタイルと言って、一番から六番まであって約30分程かかる。
1)このUスタイルは正確に、かつ徹底して同じ速度で動くことを要求される。
指定された動き以外全てを忘れてひたすらにリラックスに注意を集中することを要求される。上げた指先に蝿が止まったら腕が下に落ちるまでに力を抜きリラックスするようと云われる。
(静かに体を動かしての静寂の中、胸の奥深く燃え盛っているクリエイティブなパワフルなセンターを感じることがある。)
2)体を決められた通り位置、方向、角度、指先まで指定されて動かすことを要求される。
(この訓練によって、俳優は現場で要求されたゼスチャーやポーズを意識的に素早く確実に実行出来るようになる)
3)コーディネイションと言って、右手は手の平を上に向けて額から拳一つの位置、左腕は左に長く伸ばして手のひらは天井に向けて頭の高さ、左足は左に長く 伸ばして、右足は膝を折って深く曲げる。この位置から正確に決められた次のポジションに一定のスピードで同時にスタートして同時に終わる。
俳優にとって(舞台において右手で電話を掛けながら、左手でテーブルからコーヒーカップを持ち上げて啜りながら足を解いて立ち上がり、2,3歩歩いて肘で 窓を開けて「今晩は雨かも知れないよ」とセリフを言う) このような指示を太極拳をマスターすれば、苦もなく美しく、やってのける。
(別の機会に掲載したいと思っているが、この太極拳で培ったリラックスを元にマイケル・チェーホフの心理身体訓練を修得すると、顔を斜め下の床に悲しそう に静かに向けると悲しみで胸がいっぱいになる。また、ユックリと拳を握り締め天を見上げて睨みつけうとすると猛烈な怒りがやってくる。)
上記に書いたことは、僕は、いつでも、どこでも、誰の前でもやって見せることが出来る。ストラスバーグをはじめ、スタニス・ラフスキー、マイケル・チェーホフ、太極拳の教師たちの教えのおかげである。
アクター スタジオのメンバー達もストラスバーグの個人の訓練クラスを1年も通った人がまるでいない中、僕は、何時も日本で半年クラスを教え、半年彼の教えを求めてニューヨークのクラスに駆けつけた。今振り返ると、あの時が僕の青春時代だったのだと想いを新たにする。
4)太極拳は、動く瞑想と云われるが、ヨガ等と違って格闘技である。
ヨガの場合頭をこずかれても気が付かないかもしれない。しかし、太極拳は深いリラック スの中どんなわずかな刺激に対しても素早く反応する能力を発揮する。この事が俳優にとって太極拳が貢献する第一の理由であると確信する。
『太極拳』
太極拳は一般の人のための中国でのとても優れた健康法である。
中腰で身体をユックリと大きく動かすことで、運動量が増え血行や新陳代謝が活発になり、深く呼吸することによって有酸素運動となり世界的に広まっている。
ー俳優のための太極拳ー
ストラスバーグは、ニューヨークにやって来た京劇の俳優たちをみて、彼達の身体能力に驚嘆した。
(僕自身中国に行って俳優たちの訓練や舞台を観て彼等の体の柔軟性に驚かされた。音もなく床に横たわったと思うと次の瞬間嘘のように軽やかに、なんの努力もなく、重力抵抗もなく立ち上がっている。)
ストラスバーグの質問に答えて俳優達は、このリラックスは太極拳からだという。
僕は、この話を聞いて、翌日ニューヨークの太極拳の教師ソヒヤ・デルザの門を叩いた。以来10年間訓練に励んだ。又、日本では、楊名時先生に教えて戴いた。
楊先生は大変素晴らしい人格者でこの場で心より感謝の意を評したいと思います。
「先生、ゼン・ヒラノです。本当にお世話になりました。ありがとうございます」
人は多くの人にお世話になって今がある。
当時、思い出に残っている話が一つある。全日本空手チャンピオンが先生のクラスを一緒に受けていたので、彼に質問した。
「試合をしているときに、なんに一番注意を集中しているか」
彼の答えは、
「99パーセント リラックスだ」
僕がニューヨークで修得した太極拳はUスタイルと言って、一番から六番まであって約30分程かかる。
1)このUスタイルは正確に、かつ徹底して同じ速度で動くことを要求される。
指定された動き以外全てを忘れてひたすらにリラックスに注意を集中することを要求される。上げた指先に蝿が止まったら腕が下に落ちるまでに力を抜きリラックスするようと云われる。
(静かに体を動かしての静寂の中、胸の奥深く燃え盛っているクリエイティブなパワフルなセンターを感じることがある。)
2)体を決められた通り位置、方向、角度、指先まで指定されて動かすことを要求される。
(この訓練によって、俳優は現場で要求されたゼスチャーやポーズを意識的に素早く確実に実行出来るようになる)
3)コーディネイションと言って、右手は手の平を上に向けて額から拳一つの位置、左腕は左に長く伸ばして手のひらは天井に向けて頭の高さ、左足は左に長く 伸ばして、右足は膝を折って深く曲げる。この位置から正確に決められた次のポジションに一定のスピードで同時にスタートして同時に終わる。
俳優にとって(舞台において右手で電話を掛けながら、左手でテーブルからコーヒーカップを持ち上げて啜りながら足を解いて立ち上がり、2,3歩歩いて肘で 窓を開けて「今晩は雨かも知れないよ」とセリフを言う) このような指示を太極拳をマスターすれば、苦もなく美しく、やってのける。
(別の機会に掲載したいと思っているが、この太極拳で培ったリラックスを元にマイケル・チェーホフの心理身体訓練を修得すると、顔を斜め下の床に悲しそう に静かに向けると悲しみで胸がいっぱいになる。また、ユックリと拳を握り締め天を見上げて睨みつけうとすると猛烈な怒りがやってくる。)
上記に書いたことは、僕は、いつでも、どこでも、誰の前でもやって見せることが出来る。ストラスバーグをはじめ、スタニス・ラフスキー、マイケル・チェーホフ、太極拳の教師たちの教えのおかげである。
アクター スタジオのメンバー達もストラスバーグの個人の訓練クラスを1年も通った人がまるでいない中、僕は、何時も日本で半年クラスを教え、半年彼の教えを求めてニューヨークのクラスに駆けつけた。今振り返ると、あの時が僕の青春時代だったのだと想いを新たにする。
4)太極拳は、動く瞑想と云われるが、ヨガ等と違って格闘技である。
ヨガの場合頭をこずかれても気が付かないかもしれない。しかし、太極拳は深いリラック スの中どんなわずかな刺激に対しても素早く反応する能力を発揮する。この事が俳優にとって太極拳が貢献する第一の理由であると確信する。
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